これまでにも何度かブームを巻き起こしてきた「バナナ」が今再び注目を集めています。2018年の総務省家計調査によると、家庭での果物の支出額で、りんごやみかんを抜いて1位に。さらには、バナナジュース専門店が続々オープンするなど、バナナはいま“第三次ブーム”を迎えているといわれています。(2020年1月時点)ちなみに、第一次ブームは1903年(明治36年)、日本に初めてバナナが上陸した頃です。第二次ブームは、10年ほど前、 “朝バナナダイエット”が大流行した2009年ごろ。そして2018年頃から、じわじわと来ている第三次ブームは、コロナ禍で需要が一層増えており、去年の輸入額は過去最高を更新しました。日本バナナ輸入組合によると、「皮をむいてそのまま食べられるため、栄養価も高く、衛生的でお年寄りから子供まで安心して食べられる利点が改めて評価された。」と分析しています。果物の定番「バナナ」がなぜ今ブームなのか?その裏側を取材しました。
第三次バナナブームの裏側その1「種類の増加」
近年、日本に出回るバナナは種類が多様化し、取材で訪れたスーパーマーケットの青果売り場には、バナナだけで10種類もの品種が取り扱われています。ライフ・セントラルスクエア西宮原店(大阪市淀川区)の農産担当者によると、5年前と比べて品ぞろえが1.5倍に増えたといいます。 「それぞれ、糖度が違いますね。栽培する場所が高ければ高いほど、甘味が出ます。」 (農産担当者) いくつかのバナナのパッケージには「高地栽培」と書かれたものが。 これらは2000年ごろから出てきた品種で、平地のバナナが収穫までにおよそ10ヶ月かかるのに対し、標高500メートル以上の気温の低い高地で育てたバナナは成長が遅く、収穫までおよそ1年以上かかります。昼夜の寒暖差によりその分、糖分に変換されるデンプン質が増えるため、より甘くなるといいます。こうして多種多様な品種が出回るようになったことで、消費者も自分の好みに合ったものを選べるようになり、消費がさらに伸びたとみられます。
ブームの裏側その2 スポーツ人口の増加
「近年の健康志向の高まりを背景にスポーツをする人も増えたことで、バナナへの関心や需要も高まっているといえますね。」(日本バナナ輸入組合広報・山田結子さん) 食アスリート協会公認スポーツ栄養士の馬淵恵さんによると、運動する際にバナナがおすすめの理由として、バナナには、デンプンやブドウ糖、果糖、ショ糖といった、体を動かすエネルギー源になる糖分がおよそ4種類含まれており、それぞれ体内に吸収される時間が異なるため、継続的に長時間、エネルギーが持続するといいます。
およそ100年前日本に伝来 かつては高級フルーツ
黄色く熟したバナナに付く害虫の侵入を防ぐため、青いまま輸入される
日本に流通しているバナナは、99.9%が輸入もので、多くはフィリピンやエクアドル産です。そんなバナナが日本に初めてやってきたのは、今からおよそ100年前の1903年、明治36年4月10日のこと。台湾の商人が神戸港におよそ70キロのバナナを持ち込んだことが日本のバナナの歴史の始まりです。その後、1963年にバナナの輸入は自由化されましたが、それまでは、限られた会社しか輸入できなかったため、流通量が少なく、特別な時にしか食べられない贅沢品でした。神戸港には、果物の輸入を手掛ける会社「ドール」のバナナが保管されている巨大な倉庫があります。重厚な扉の奥には床から天井まで積み上げられた大量のバナナの箱が。多いときには、およそ400万本ものバナナが保管されているそうです。
鮮度維持のカギは「13.5度」
倉庫で眠るバナナは、全てまだ熟していない青いままの状態。皮も果肉も固く、食べられる状態ではありません。黄色く熟したバナナには害虫が付きやすく、害虫の侵入を防ぐため熟したバナナの輸入は法律で禁止されています(植物防疫法)。そのため、収穫してから日本に到着するまで青い状態を保つ必要があるのです。取材に当たった岩原大起キャスターが、熟成前の青いバナナを試食してみました。
「固い…実もパサパサしていて、ジャガイモみたいな感じですね・・・」(岩原大起キャスター) ドールマーケティング本部の大滝尋美さんによると、重要なのは温度管理で、室温を13、5℃に保つとバナナは眠っている状態なり、熟成が進まず、青い状態を維持することができるといいます。 「フィリピンの倉庫でも13、5℃。船で輸送するときでも13、5℃。この倉庫も13、5℃、ずっとそれをキープしています。」(大滝尋美さん) その後、バナナは、店頭に並ぶまでに、「室(むろ)」とよばれる温度20℃、湿度80~90%の暖かい部屋で1週間ほどかけて熟成され、私たちにも馴染みある黄色いバナナに変化していきます。
そんなバナナ!?日本の北国で育つ「雪国バナナ」
秋田県のビニルハウスで栽培されている国産バナナ(秋田県美郷町)
バナナが栽培されているのは南米や東南アジアなどの赤道直下から北緯南緯それぞれ30度以内の、熱帯や亜熱帯地域で“バナナベルト”と呼ばれるエリアです。そんなバナナが日本でも栽培されていると聞き、取材に訪れたのは、なんと雪国・秋田県美郷町。一面銀世界の中、そのバナナ農園はありました。ビニルハウスの中には、大きな葉を茂らせて、たわわに実ったバナナが。 「普通のバナナよりも若干、寒さに強くて成長の早いタイプの苗を植えています。」 (秋田食産 佐藤良一さん) このバナナ農園の苗は、岡山県の農業法人が開発した“凍結解凍覚醒法”という手法で育てられたもので、バナナの成長細胞をマイナス60度に凍結してから常温で自然解凍し、苗を発芽させています。地球はこれまでに何度か氷河期を迎えてきましたが、その時でもバナナは生き残った証拠があることから、バナナに氷河期を疑似体験させることで、寒さに強い品種を生みだしたのです。そのため、ハウス内は18℃とフィリピンの平均気温よりも10℃近く低いですが、ちゃんとバナナが育ちます。今では、この技術のおかげで日本でも北は北海道から南は鹿児島までバナナの栽培が広がっているのです。無農薬栽培のため、皮ごと食べられる「雪国バナナ」(秋田食産)
秋田で育ったこのバナナは「雪国バナナ」として地元の直売所やインターネットでも販売され、1本400円から、高いものは800円と、なかなかのお値段ながら、人気は上々。しかも、日本にはバナナにつく害虫がいないため、農薬を使わずにすむことから、皮ごと食べることができます。雪国バナナを育てている佐藤良一さんによると、皮はサクサクとした食感で、実よりも栄養価が高いそうです。地元のお菓子屋さんとコラボし、皮ごと使ったケーキも発売。将来的には雪国バナナを使って様々な加工品を生み出し、地域の特産品になればと期待が寄せられています。およそ100年前、日本にやってきた黄色い宝石バナナ。その優れた栄養価で幾度もブームを巻き起こし、子どものおやつに、スポーツのお供に、はたまた地域活性化の起爆剤にもなる万能選手は、これからも、私たちの体と暮らしを支えてくれることでしょう。
(読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2020年1月放送分)

























